技術ポイント解説 / GROWTH DIAGNOSIS & MID-SEASON MANAGEMENT
生育診断・中間管理
― 分げつ・中干し・穂肥を「作物を見て」決める
SOP(標準作業手順書)は「いつ・何を・どう作業するか」に強い一方、穂肥の要否・分げつや中干しの見極めといった"作物を見て判断する"部分は薄くなりがちです。しかしここが籾数・倒伏・品質を最も左右します。
乾田直播は苗立ち本数がばらつき、生育が移植より7〜12日遅れるため、暦ではなく生育指標(葉齢・茎数・葉色・幼穂長)で判断する重要性が移植以上に高い。その判断のものさしと基準をまとめました。
★ 最重要
⚠ 失敗リスク
💡 コツ
📄 出典
5つのものさし:主稈葉齢/茎数(本/㎡)/草丈/葉色(SPAD・葉色板)/幼穂長(mm→cm)。定点株を決め、経時変化で見るのが基本。
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幼穂長 — 時期判定の核主稈の葉鞘を1枚ずつ剥いで成長点(幼穂)を測る。1〜2mm=幼穂形成期(出穂前約20〜24日)、1〜2cm=減数分裂期(出穂前約12〜15日、盛期は約10日前)、約8cm=出穂約7日前。「白く見え始め=約1mm」「米粒1〜2個分=1〜2cm」が現場の合言葉。📄 松島/星川・広島県 生育段階判定
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葉色(SPAD/葉色板)— 要否判定止葉の1枚下(最上位完全展開葉)の中央を数点測り平均。幼穂形成期の目安 SPAD 32〜35(葉色板 約4〜4.5)。濃い(SPAD35以上)=体内Nが多い→穂肥は危険(減量・見送り)/淡い→施用を検討。葉色板⇄SPAD換算は県で式が異なり幅あり(例:千葉 SPAD=葉色板×7.8+1.6)。📄 新潟/千葉/島根 指針
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葉齢・茎数・草丈葉齢は品種の総葉数(例:コシヒカリ約13葉)を把握して数え、「そろそろ幼穂を剥いて確認」の合図に使う。茎数は1㎡枠(直播は株の概念が薄いので枠取りが実際的)。草丈は生育量(過繁茂・N過多)のサイン。📄 広島県ほか
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乾直での注意苗立ちムラで個体差が大きい。複数株・複数茎を剥いて平均で判断。葉齢は目安にとどめ幼穂長を優先。出芽起点がばらつくので積算気温の起点は出芽そろい日にそろえる。
標準:目標穂数は良食味で300〜400本/㎡(多収志向で〜450本)。目標茎数の約8割に達したら「有効分げつ限界期」=ブレーキのタイミング。
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効く理由穂数は収量(総籾数=穂数×1穂籾数)の土台。ただし多すぎると1本が細く軟弱化し倒伏、株内が込み合い受光・登熟が落ちる。「確保したら早めに止める」のが良食味の定石。📄 全農/県指針
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ありがちな失敗過剰分げつ(過繁茂)→倒伏・下位葉枯死・登熟不良・いもち多発。乾直は基肥一発のN後効きが乗ると後半に過繁茂→倒伏へ振れやすい。
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コツ定点で茎数を追い、増加が鈍って目標穂数の約80%に届いたら中干しでブレーキ(次項)。茎数不足なら浅水・間断で分げつを促す。
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乾直での注意初期生育が緩慢で分げつ発生が遅れる一方、後半に過繁茂へ振れやすい。目標穂数はやや控えめに設定。乾直は圃場が締まり生育制御しやすく倒伏回避に有利(例:ササニシキの乾直事例)。
標準(移植):目標茎数の約80%到達(有効分げつ限界期ころ)で開始、田面に軽く亀裂・足跡が付く程度に約1週間。乾直:基本的に生育期間の落水は不要、過剰生育時のみ実施。
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効く理由無効分げつ抑制、根への酸素供給で根の健全化、還元障害(硫化水素等)軽減、茎を締めて耐倒伏性向上、収穫機のための地耐力確保。📄 東北農研 乾直マニュアル
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乾直の要点乾田直播はもともと圃場が締まって地耐力・排水性が高いため、移植のような定型の中干しは原則不要。農研機構東北農研マニュアルも「基本的に生育期間の落水は不要、過剰生育が見られたときに中干し」と明記。過繁茂時のみ実施する。
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コツ濃い葉色・過剰茎数ならしっかりめ・やや長め、控えめならごく軽く。中干し明けは一気に湛水せず間断灌漑で根を戻す。近年はメタン抑制目的で前進・延長する動きも。
標準:2回体系=幼穂形成期(出穂前約18〜20日・幼穂1〜2mm)+減数分裂期(出穂前約10〜12日・幼穂1〜2cm)。乾直は基肥一発が主流で、追肥は出穂10日前にN1kg/10a、生育過剰なら見送り。
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時期は幼穂長、要否は葉色幼穂長で"いつ"を、葉色で"入れるか・量"を決める。幼穂形成期にSPAD 35以上(葉色板4.5以上)で濃ければ減量・見送り、SPAD 32前後より淡ければ施用。出穂期にSPAD 33を下回る予想ならN1kg/10a目安で補う(幅あり・県で異なる)。📄 千葉/島根/新潟 指針
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窒素過多の弊害倒伏、玄米タンパク上昇による食味低下、いもち誘発。良食味米(ササニシキ・ひとめぼれ等)では濃い葉色なら思い切って見送るのが定石。
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乾直のコツ緩効性基肥一発は出穂30〜22日前ごろに肥効が一時途切れ、葉色が一過性で淡む設計が多い。この一時的な淡化に反応して追肥しすぎない。窒素は代かき湛水直播の約1.5倍施用(乾田期に土壌N供給が遅れるため)。📄 東北農研/岩手 直播専用211号
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地域での作り分け石巻・岩手・大潟村は出穂10日前N1kg、庄内は幼穂形成期に十分なら出穂20日前を回避し10日前、新潟は出穂20日前+10日前、大崎の新体系は穂首分化期+葉色淡いときのみ、北海道は2〜4葉期の分げつ肥中心(下表)。
※ 目安:幼穂形成期=出穂前約20日、減数分裂期=出穂前約10〜12日。中干しは乾直では原則不要(過繁茂時のみ)。減数分裂期は低温時に深水15〜20cmで幼穂を保温。
✓定点を決めたか(同じ株・同じ葉位・同じ時刻で経時観察)。直播は複数株・複数茎で平均。
✓茎数が目標穂数(良食味300〜400本/㎡)の約8割に達したか。到達=有効分げつ限界期=ブレーキ判断。
✓中干しは必要か。乾直は原則不要=過繁茂(濃い葉色・過剰茎数・草丈旺盛)のときだけ実施。
✓幼穂を剥いて長さを測ったか。1〜2mm=幼穂形成期(穂肥①)、1〜2cm=減数分裂期(穂肥②・冷害危険期)。
✓葉色(SPAD/葉色板)を測ったか。濃い(SPAD35以上)=穂肥は減量・見送り、淡い=施用。一時的な淡化に過反応しない。
✓減数分裂期の低温(日平均20℃・日最低17℃以下が2〜3日以上)に注意。危険期は深水15〜20cmで保温。
✓良食味米で倒伏・食味を優先するなら、迷ったら穂肥は控えめに。