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PLANT PHYSIOLOGY — SCIENTIFIC FOUNDATION

水稲 植物生理
栽培管理に必要な6カテゴリ・完全ガイド

稲づくりのあらゆる判断は、イネという植物の基本生理を理解することから始まります。作期設計・施肥・水管理・防除の「なぜそうするのか」を、 分類・温度・光・水分・養分・生育ステージの6カテゴリで体系化しました。数値スペックと栽培管理への意義を同じフォーマットで整理し、乾田直播ならではの管理判断にも接続します。

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CATEGORY 01 — CLASSIFICATION

分類・基本特性

イネがどんな植物かを知ることが栽培の出発点。湛水で育つ特異な作物である理由と、水田が連作できる理由が、乾田直播で「何を補うべきか」を示してくれます。

学名Oryza sativa L.
和名 / 英名イネ(稲)/ Rice
科属イネ科(Poaceae)イネ属(Oryza)
原産地アジア(中国長江中下流域〜東南アジアが栽培化の中心とされる)
生育型一年生(栽培上)。可食部は頴果(えいか)=籾から籾殻を除いた玄米
根系ひげ根(繊維根)。湛水適応として通気組織(アレンキマ)が発達し、地上部から根へ酸素を通導。根圏に酸素を漏出し「酸化的根圏」を形成
生態型japonica(短粒・冷涼適応)/ indica(長粒・温暖適応)。日本の主力は温帯japonica
近縁・雑草祖先野生種は野生イネ(O. rufipogon 等)。水田内に雑草イネ(赤米型など、脱粒性・休眠性が強い)が問題化する例あり
連作特性水田は連作障害が出にくい(畑作物と対照的に毎年同一圃場で作付け可能)

🔑 なぜ湛水で育ち、連作できるのか

イネは通気組織による内部酸素供給で、還元的な湛水土壌でも根が生存できる特異な作物です。水田が連作障害を受けにくいのは「湛水による回避」が本質で、① 湛水で嫌気・好気が周期的に切り替わり特定の土壌病害・線虫の増殖が抑えられる、② 灌漑水が養分を供給しpHを中性付近に緩衝する、③ 自家中毒物質(アレロパシー物質)が水で希釈・流去される、という3つの作用が働きます。

🌾 栽培管理への意義

  • 湛水は雑草抑制・温度緩衝・連作可能性を同時に実現する日本型稲作の基盤。
  • 乾田直播は湛水期間を短縮するため、この「湛水の恩恵」が一部失われる。
  • → 失われる分を 雑草防除・病害・養分(脱窒)管理で個別に補強する必要がある(カテゴリ4・5に直結)。
▶ 乾田直播との接続 湛水前の乾田期間があるため、畑雑草・難防除雑草が出やすく、土壌が酸化的になって窒素が失われやすい。詳細は 播種・苗立ち確保 と 養分カテゴリを参照。
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CATEGORY 02 — TEMPERATURE

温度生理

水稲栽培の作期設計は、突き詰めれば「3つの臨界期を安全な温度帯に置く」逆算作業です。減数分裂期の低温、出穂・開花期の高温/低温、登熟期の高温——それぞれの臨界温度を理解することが要になります。

発芽適温最適30〜35℃/最低10〜13℃/最高(限界)42〜44℃。40℃以上の水温で籾が死滅しうる
生育適温(日平均)おおむね25〜30℃。20℃未満で生育鈍化
分げつ日平均16℃程度以上で発生、20℃以上で盛ん
出穂・開花の適温日中最高25〜30℃が良好。最高気温が約22℃以下で不稔歩合が急増
登熟適温(日平均)最適20〜24℃
障害型冷害減数分裂期(出穂前約10〜15日)に日平均約17〜19℃以下の低温で花粉障害・不稔。17.5℃以下が5日以上継続で不稔急増
高温登熟障害出穂後約20日間の日平均が26〜27℃超で白未熟粒(乳白・心白・背白等)増加、品質低下
登熟の積算気温出穂日から日平均気温を積算し約1,000℃で成熟・収穫適期(品種差あり)
日平均気温生育の状態該当する栽培場面
15℃未満生育緩慢・冷害リスク寒地の初期/障害型冷害の警戒帯
16〜20℃やや緩慢(分げつ可能)寒冷地の栄養生長期・登熟後半
20〜24℃★ 登熟の最適帯寒地〜寒冷地の登熟期の狙い目
25〜30℃栄養生長の適温本州の分げつ〜幼穂形成期
26〜27℃超(登熟期)高温登熟障害リスク温暖地・猛暑年の登熟期は要回避

❄ 障害型冷害(低温)

減数分裂期は花粉母細胞が最も低温に弱い時期。低温で葯(やく)のタペート組織が異常となり花粉が育たず、受精できず不稔に。一時点の低温が致命的。対策=深水(15〜20cm)で幼穂を保温

🔥 高温登熟障害(高温)

登熟前中期の高温でデンプン合成が滞り、胚乳に隙間ができて白く濁る(乳白・心白粒)。夜温が高いと夜間呼吸で悪化。対策=作期移動・掛け流し灌漑・適正施肥

🔑 積算気温(GDD)による予測

発育速度は基準温度以上で概ね温度に比例するため、積算気温で生育段階を予測できます。登熟:出穂後の日平均気温を積算し約1,000℃で収穫適期(例:日平均22℃なら出穂後約45日)。 乾田直播の出芽予測:有効積算気温=Σ(日平均気温−11.5℃)で、積算50℃で出芽始。30〜50℃が出芽前除草剤の散布適期です。

🌾 栽培管理への意義

  • 作期設計の核心は「①減数分裂期を安全な高温期に、②出穂・開花期を高温/低温・台風期からずらし、③登熟期を最適帯(日平均20〜24℃)に置く」逆算。
  • 寒地は早生品種で登熟温度を確保、温暖地は晩植・作期移動で高温登熟を回避。
  • 収穫適期は出穂後積算約1,000℃で判定。AMeDASの日平均気温を活用。
▶ 乾田直播との接続 乾直は移植より出穂が7〜12日遅れるため登熟期間を確保できる早〜中生品種が前提。出芽予測(有効積算50℃)とノビエ葉齢判定は 播種・苗立ち確保 で詳説。
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CATEGORY 03 — LIGHT & PHOTOPERIOD

光・日長生理

イネは短日植物で、出穂の早晩は「感光性・感温性・基本栄養成長性」の3性質で決まります。多収・耐倒伏には群落の受光態勢(葉の立ち方)が効いてきます。

日長反応短日植物。限界日長より短くなると幼穂分化が誘導される。この反応の強さが感光性
感温性高温で出穂が促進される性質
基本栄養成長性日長・温度に関わらず必要な最低栄養成長期間(BVG)
早晩性の決まり方早生・晩生は感光性・感温性・基本栄養成長性の組合せで決まる。日本の主力品種は感光性が弱く感温性が強い傾向
光合成型C3型
光飽和点 / 補償点個葉の光飽和点は比較的低い(目安40〜60klx、文献差あり)/補償点は低い(1〜数klx)
受光態勢群落では上位葉が飽和しても下位葉に光が届くため群落全体は飽和しにくい。葉身角が小さい(立った葉)ほど多収・耐倒伏

🔑 早晩性と受光態勢のメカニズム

短日・感温・BVGの3性質が出穂期を決めるため、同じ品種でも緯度(日長)・作期(温度)で出穂日が動きます。C3植物のイネは個葉の光飽和点が低い一方、葉が何層も重なる群落では立った葉ほど下位葉まで光が通り、群落全体の光合成と登熟が高まります。

🌾 栽培管理への意義

  • 早晩性を理解して品種選択・作期設計(寒地は早生で登熟温度確保、温暖地は晩植で高温登熟回避)。
  • 多収・耐倒伏には受光態勢の改善——立葉型品種・適正な栽植と施肥(過繁茂を避ける)。
  • ケイ酸施用は葉を直立させ受光態勢を改善(カテゴリ5に接続)。
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CATEGORY 04 — WATER & TRANSPIRATION

水分生理

湛水は雑草抑制・温度緩衝・養分可給化を同時にこなす稲作の要。減数分裂期・出穂開花期の水不足は不稔に直結します。乾田直播は「乾田期→湛水」の切替を、均平・鎮圧・日減水深で成立させます。

湛水の意義雑草抑制(畑雑草の発芽・生育を抑制)・温度緩衝(水の比熱で急変を緩和・低温期の保温)・養分可給化(還元でリン酸・鉄等の可給性向上、窒素はアンモニア態で安定)
需水量全期でおおむね1,000〜1,500mm前後(蒸発散+浸透。地域・土壌で大差)
水分感受性の高い時期減数分裂期・出穂開花期は水不足・低温に極めて弱い
中干し最高分げつ期頃に一時落水し、無効分げつ抑制・根への酸素供給・還元障害軽減・耐倒伏性向上・地耐力確保
間断灌漑湛水と落水を繰り返し、根への酸素供給と水分供給を両立
乾田直播の水管理出芽まで畑状態日減水深2cm/日以下に均平・整地し漏水を抑制。鎮圧で止水層を形成、出芽揃い後に湛水へ移行

🔑 湛水と中干しのメカニズム

湛水は物理(保温・雑草の光/酸素遮断)と化学(土壌還元による養分可給化)の両面で作用します。減数分裂・出穂開花期に水を切らせないのは、細胞分裂・受精・花粉稔性が水ストレス(膨圧低下)で直接阻害されるため。中干しは、長期湛水で生じる根圏の酸素欠乏・還元有害物質(硫化水素等)を一時的に酸化条件へリセットし、根を守る操作です。

🌾 栽培管理への意義

  • 「湛水—中干し—間断灌漑—落水」を計画的に運用。
  • 減数分裂期の低温時は深水で保温、出穂開花期は水を切らさないのが鉄則。
  • 乾直では均平・鎮圧・日減水深管理が出芽率と雑草管理の成否を決める最重要ポイント。
▶ 乾田直播との接続 止水層形成・日減水深2cmの作り込みは 圃場準備・整地体系、入水(1.5葉期)以降の水管理は今後の「入水・水管理」ページで詳説。
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CATEGORY 05 — NUTRIENT ABSORPTION

養分吸収生理

窒素は籾数(シンク容量)と登熟を決める最重要要素。イネ科特有のケイ酸は耐倒伏・耐病・受光態勢を一手に改善します。乾田直播では脱窒・溶脱を前提とした施肥設計が欠かせません。

窒素 (N)8〜10 kg/10a目安(施肥基準・地力で幅あり)。籾数と登熟を左右する最重要要素
りん酸 (P₂O₅)6〜10 kg/10a 目安。初期生育・根張り
加里 (K₂O)8〜10 kg/10a 目安。登熟・耐病・水分制御
ケイ酸 (SiO₂)吸収量は窒素の約10倍(120kg/10a級)。耐倒伏・耐病・受光態勢改善。資材は約20kg/10a施用する例
生育診断SPAD値・葉色板で葉身の窒素状態を診断し、穂肥の要否・量を判断

窒素吸収パターン(生育段階別の配分イメージ)

分げつ期
旺盛
幼穂形成期
再上昇
登熟期
減少

※ N・P・K・Mg の多くは出穂前までにほぼ吸収され、出穂後は根機能低下で吸収が鈍る。基肥—分げつ肥—穂肥と配分する。

🔑 シンク容量とケイ酸、そして乾直の脱窒

収量は「シンク容量(総籾数=穂数×1穂籾数)×登熟歩合×粒重」で決まり、籾数は主に幼穂形成期までの窒素・生育量で作られます。ケイ酸は蒸散流で運ばれ茎葉の表皮下にシリカゲルとして沈着し、機械的強度と葉の直立性を高めます(倒伏・病害を物理的に抑制)。 乾田直播で窒素を移植の約1.5倍施用するのは、① 硝化された硝酸態窒素が湛水移行時に脱窒(N₂ガス化)で失われ、② 硝酸態が溶脱で流亡し、③ 畑期間の地力窒素発現が不安定なため、その損失を補償する必要があるからです。

🌾 栽培管理への意義

  • SPAD/葉色板で「見て効かせる」施肥。過剰は倒伏・食味低下・いもち誘発、不足は籾数・登熟不足。
  • ケイ酸資材は倒伏・いもち・受光態勢を同時改善する費用対効果の高い管理。
  • 乾直では脱窒・溶脱を前提に施肥設計(緩効性肥料・分施・湛水タイミング調整)。地力に応じ減肥/増施を作り分ける。
▶ 乾田直播との接続 地域ごとの基肥N設計(庄内8kg〜岩手12kg、北海道は2〜3割増)・低コスト施肥・速効性新体系は、今後の「施肥設計」ページと 9地域 比較表 を参照。
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CATEGORY 06 — GROWTH STAGES & CRITICAL PERIODS

生育ステージと臨界期

発芽から成熟まで、収量は「シンク容量(籾数)を作り込む前半」→「登熟で充填する後半」の2段階で決まります。その途中に、失敗が許されない3つの臨界期があります。

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発芽・出芽
播種後 数日(乾直=有効積算50℃で出芽始)
適温で発芽・出芽。乾直では出芽揃いが苗立ちの土台。
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活着・分げつ期
〜最高分げつ期
有効分げつ(穂になる分げつ)を確保。最高分げつ期以降、無効分げつは淘汰。この前後で中干し。
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幼穂形成期
出穂前 約30〜25日
幼穂分化が始まり籾数が決まっていく。穂肥のタイミング。
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減数分裂期 臨界期①
出穂前 約10〜15日(幼穂長 約8cm)
耐冷性の臨界。日平均約17〜19℃以下で花粉障害=障害型冷害。対策=深水保温。
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出穂・開花・受精 臨界期②
出穂とほぼ同時に開花
高温/低温不稔の臨界。開花時の高温(35〜40℃前後)や低温(最高22℃以下)で受精障害。対策=作期設計・掛け流し灌漑。
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登熟期(乳熟→糊熟→黄熟) 臨界期③
出穂後 約20日間が感受性高/積算約1,000℃で成熟
高温登熟障害の臨界。日平均26〜27℃超で白未熟粒・品質低下。対策=作期移動・水管理・適正施肥。

🔴 3つの臨界期 — 失敗が許されない局面

① 減数分裂期(出穂前10〜15日)=低温で不稔(障害型冷害)/② 出穂・開花期=高温・低温で不稔/③ 登熟期(出穂後約20日)=高温で白未熟粒。
いずれも一過的な悪条件が最終収量を大きく削るため、作期設計でこれらを安全な気象に配置し、当日の気象に応じた水管理(深水保温・掛け流し)で守る。

🌾 栽培管理への意義

  • 収量成立はシンク容量(総籾数=1㎡穂数×1穂籾数)の確保 → 登熟による充填の2段階。
  • 各ステージへの働きかけ:基肥・分げつ肥で茎数、中干しで根・稈質、穂肥で籾数と登熟窒素、水管理で臨界期の温度・水分を守る。
  • 3臨界期を安全な気象に配置する作期設計が、japonica水稲の安定多収・良食味の要。
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CATEGORY 07 — STRESS PHYSIOLOGY

ストレス生理(病害虫・気象と生理)

病害虫や異常気象は、それぞれ特定の生理機能を壊すことで減収させます。この節は「何が・どの機能を・どう壊すか」を一望する入口だけを置き、具体的な防除体系(薬剤・発生予察・IPM)は防除ページに譲ります。生理の6カテゴリと結びつけて捉えるのが狙いです。

ストレス主な例壊される生理機能特に気を付ける時期減収の経路関連カテゴリ
■ 生物的ストレス(病害虫・雑草)
いもち病葉いもち・穂いもち光合成・葉面積・穂の登熟分げつ期(葉)・出穂期前後(穂)。低温多湿・過繁茂で多発同化量低下・登熟不良②温度⑥ステージ
紋枯病下位葉鞘の病斑下位葉の受光・通導、稈の強度分げつ最盛期〜出穂期(高温多湿・梅雨明け後)登熟低下・倒伏助長③光⑥ステージ
ウンカ類トビイロ・セジロウンカ(師管吸汁)師管の通導(同化産物の転流)出穂期〜登熟期(飛来後に増殖)坪枯れ・登熟阻害④水分⑤養分
カメムシ類登熟中の子実を吸汁シンク(玄米)を直接加害出穂後〜登熟初期(乳熟期)。周辺雑草の出穂も要注意斑点米・品質低下⑥ステージ
雑草ノビエ等(乾直で顕在化)光・水・養分の競合出芽〜初期生育(乾直=乾田期の出芽前後)苗立ち・初期生育の抑制③光④水分⑤養分
■ 非生物的ストレス(気象・土壌)
高温(登熟期)出穂後約20日間 日平均26〜27℃超胚乳へのデンプン充填出穂後 約20日間(特に5〜15日)白未熟粒・整粒歩合低下②温度⑥ステージ
低温(減数分裂期)日平均20℃・日最低17℃以下花粉形成(稔性)出穂前10〜15日(減数分裂期)。最も弱いのは出穂前10〜11日頃障害型冷害・不稔②温度⑥ステージ
湿害・還元障害根腐れ・硫化水素・秋落ち根の吸水・吸肥(根の活力)分げつ後期〜登熟期(中干し遅れで悪化)登熟低下・下位葉枯れ上がり④水分⑤養分

❄ 深掘り:減数分裂期の低温は「どのくらい続くと」効くのか

危険期は出穂前10〜15日(幼穂長約8cm、最も弱いのは出穂前10〜11日頃の四分子期)。この時期に日平均20℃・日最低17℃以下になると障害不稔が出はじめ、低いほど・長く続くほど不稔が増えて減収が大きくなります。 ポイントは継続時間で、夜間に数時間下回る程度の一過的な冷え込みでは基本的に影響は小さく、低温が2〜3日以上持続して初めて不稔が発生します(品種の耐冷性で限界温度が変わり、強い品種15〜17℃/弱い品種17〜19℃)。 さらに幼穂は水面付近にあるため、実際に効くのは気温より水温。危険期には深水(水深20cm以上)で幼穂を保温するのが唯一かつ最大の回避策です。東北・北海道・山間部の夏の冷え込みでは「この危険期に当たるか」と「水温・深水で守れているか」が分かれ目になります。

🔑 「機能を壊す」視点で捉える意味

同じ「減収」でも、受光・光合成を削るもの(いもち・紋枯・雑草)/通導を断つもの(ウンカ・湿害)/シンクを直接侵すもの(カメムシ・高温登熟)/稔性を壊すもの(減数分裂期の低温)は対処が異なります。「どの生理機能への攻撃か」を見極めると、生理6カテゴリの管理(作期設計・水管理・施肥)と防除が一本の線でつながります。
▶ この節は入口です。 具体的な薬剤・防除体系・発生予察・抵抗性管理は防除ページ(今後整備)へ。さらに踏み込む場合は、病害虫を「壊す生理機能」で分類した機能別マトリクス(別建て・作物横断)への発展も想定しています。