乾田直播 技術マップ / 工程別 技術ポイント解説 / 圃場準備・整地体系
技術ポイント解説 ①/⑥ FIELD PREPARATION

圃場準備・整地体系
― 耕起・砕土・均平・鎮圧で「止水層」をつくる

代かきをしない乾田直播では、整地工程の精度がそのまま苗立ちと初期湛水の成否を決めます。耕起→砕土→均平→(施肥)→播種→鎮圧という一連の流れの中で、 砕土率・田面均平・鎮圧の3点をどう作り込むかが核心です。各工程の標準値・効く理由・失敗パターン・地域での作り分けをまとめました。

★ 最重要 ⚠ 失敗リスク 💡 コツ 📄 出典SOP
このページの核心=「鎮圧による止水層形成」。
代かきで作る不透水層の代わりに、乾田直播では適度な土壌水分のもとでローラ鎮圧し、地表近くに人工的な止水層をつくって漏水を抑えます。 そのためには細かく砕けた土(砕土率70%以上)水平な田面(高低差5〜10cm以内)が前提条件。砕土率と苗立ち率には強い相関(r=0.869)があり、 「砕土・均平・鎮圧」は独立した作業ではなく一つの止水システムとして設計します。
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耕起

💡 秋耕推奨
標準:プラウ(刈株を完全反転埋没)/スタブルカルチ(チゼルプラウ、耕深20cmで約8割埋没・8km/h高速)。秋耕が効果的。
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効く理由耕盤を残さず反転・膨軟化することで排水性が改善し、水田と畑作物の輪作(稲-麦-大豆)に向く。残渣を埋没させ播種・出芽の障害を除く。📄 東北版 SOP19-002
ありがちな失敗刈株・残渣の埋没が不十分だと播種精度・出芽が低下。耕深ムラは砕土・均平のばらつきに連鎖する。
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コツ秋耕しておくと土塊が冬の凍結・融解で崩れ、春の砕土が楽になる。海岸地帯では秋耕でコウキヤガラ等の塊茎密度低下にも寄与。
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作り分け耕起機械の比率は地域差大。大崎はプラウ38%と高め、石巻はロータリ79%中心、北海道は前年夏にチゼルプラウで前倒し。
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砕土・整地

★ 苗立ちに直結
標準:バーチカルハロー(パワーハロー)等で砕土率70%以上(2cm以下の土塊割合)を目標。
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効く理由砕土率と苗立ち率には強い相関(r=0.869)。細かい土は種子と土の接触を高め、均一な出芽と鎮圧時の止水層形成を可能にする。砕土率70%・播種量5kg/10aで苗立ち率約50%=100本/㎡を確保できる。📄 東北版 SOP19-002
ありがちな失敗砕土不足(粗い土塊が多い)→苗立ち率低下・出芽ムラ。逆に過度の砕土は降雨でのクラスト(表面硬化)を招きやすい。
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コツ土壌水分が適正な日を選ぶ。砕土と鎮圧・播種を1工程化するコンビネーション作業(新潟下越)なら、消雪後の短い作業期間を効率化できる。
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作り分け砕土整地はバーチカルハローが主流だが、美里涌谷大崎はロータリーシーダ併用50%、大崎はバーチカルハロー100%と地域で画一化の度合いが異なる。
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均平

★ 最重要⚠ 最も時間を要す
標準:レーザー/GNSS均平機で田面高低差5〜10cm以内(東北は10cm以内、新潟・北海道は5cm以内)。プラウ耕時は均平必須。
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効く理由田面が平らでないと、初期湛水の浅水管理ができず、除草剤の効きムラ・出芽ムラ・苗立ちの不均一を生む。乾田直播では「水の薄い膜」を全面に行き渡らせる必要があり、均平精度が直接効く。📄 新潟下越 SOP22-216
ありがちな失敗高低差が大きいと、高い所は出芽不良・低い所は過湿で苗立ち低下。除草剤も低い所に偏り効きムラ。整地工程で最も時間を要するため、ここを省くと全体が崩れる。
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コツドローン高低差マップの活用で均平作業を短縮(新潟下越で1ha 5.23h→3.72h)。北海道は前年整地で均平を前年に済ませ春作業を平準化。
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作り分け均平実施率は地域差大(美里涌谷大崎63%が最高)。日本海側・北海道は消雪後の作業逼迫が厳しく、前年整地やマップ活用で対応。
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鎮圧(核心技術)

★ 最重要
標準:播種前鎮圧で足跡沈下を北部4cm/南部5cm/北海道約10mmに。播種後はケンブリッジローラで縦横各1回。畦畔法尻もトラクタホイルで踏圧。
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効く理由(止水層形成)代かきをしない乾田直播では、適水分(山中式硬度計20mm前後)でローラ鎮圧し、地表近くに人工的な止水層を作って漏水を抑える。鎮圧の有無で苗立ちが大きく変わる(鎮圧有208本/㎡・苗立ち率87% ⇔ 無178本/㎡・74%)。📄 東北版 SOP19-002
ありがちな失敗土壌水分が過多のまま鎮圧すると締まりすぎて出芽不良、不足だと止水層が形成されず漏水で初期湛水が成立しない。「底なし水田」では段階的に鎮圧して止水層を育てる。
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コツ畦畔法尻はトラクタ車輪で踏圧、漏水が激しい場合はベントナイト5kg/m散布。北海道は積雪による自然鎮圧も活用。砂質・黒ボク等の漏水土壌ほど鎮圧を重視する。
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作り分け足跡沈下の目安は北部(岩手・大潟村)4cm、南部(宮城・庄内)5cm、北海道は約10mmと、土壌型・気象で硬さ設定が異なる。

地域別 整地体系の作り分け

同じ整地体系でも、播種深・鎮圧硬さ・均平基準は地域で変わります。赤字は際立って異なる値。

地域主な耕起砕土整地均平基準足跡沈下播種深
東北地方版(基盤)プラウ/スタブルカルチケンブリッジ/パワーハロー10cm以内北4/南5cm北1.5/南2.5cm
宮城 石巻ロータリ79%バーチカルハロー50%実施39%5cm2.5cm
宮城 美里涌谷大崎ロータリ67%ロータリーシーダ50%実施63%(最高)5cm2.5cm
宮城 大崎プラウ38%バーチカルハロー100%実施38%5cm2.5cm
岩手 花北・奥州プラウ71%バーチカルハロー75%実施75%4cm1.5cm(最浅)
山形 庄内スタブルカルチ等バーチカルハロー10cm以内5cm2.5cm
新潟 下越プラウ/スタブルカルチカットロータリ+コンビ作業5cm以内(精密)5cm2cm
秋田 大潟村ロータリ60%/プラウ30%バーチカルハロー67%実施67%4cm1.5cm
北海道(空知)前年チゼルプラウパワーハロー5cm以内約10mm1.0cm(最浅)

整地〜播種 作業タイムライン

東北地方の標準的な作業時期(岩手県花巻市の栽培暦に準拠)。日本海側・北海道は消雪後に作業が集中、北海道は前年秋に整地を前倒しする点が異なります。

10〜11月
(前年)
3月下旬
4月上旬
4月中旬
4月下旬
5月上旬
5月中旬
耕起
秋耕(推奨) / 春耕
砕土・均平
砕土・整地・均平
施肥・鎮圧
基肥→播種前鎮圧
播種・後鎮圧
播種→ケンブリッジローラ鎮圧

※ 寒冷地北部(岩手・大潟村)は4月上旬から、南部(庄内)や新潟は4月中下旬〜5月上旬が播種適期。北海道は前年夏〜秋に耕起・均平を済ませ、春は5月上旬に播種。

現場 判断チェックリスト

整地〜鎮圧の可否・適否を現場で判断するための確認項目。

砕土率は70%以上か(2cm以下の土塊が大半)。粗い土塊が目立つ場合は再砕土を検討。
田面高低差は基準内か(東北10cm/新潟・北海道5cm以内)。低い所に水が偏らないか目視・マップで確認。
土壌水分は鎮圧適期か。山中式硬度計20mm前後/長靴で歩いて足跡沈下が目安値(北4・南5cm)になるか。過湿・過乾を避ける。
畦畔・法尻の踏圧は済んだか。漏水が激しい圃場はベントナイト散布を検討。
播種後鎮圧はケンブリッジローラで縦横各1回実施したか。止水層形成と種子の鎮圧密着を確認。
漏水土壌(砂質・黒ボク)では鎮圧を強化。日減水深2cm/日以下に収まるか入水後に確認。
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