技術ポイント解説 ③/⑦ FERTILIZATION DESIGN
施肥設計
― 窒素は「移植の約1.5倍」を、地力で作り分ける
乾田直播の施肥は、移植と同じ設計では失敗します。乾田期間に窒素が脱窒・溶脱で失われるため増量が必要な一方、地力の高い圃場や大豆跡では大胆に減らす——
この「増やす理由」と「減らす判断」を理解することが核心です。基肥N設計・肥料タイプの選択・低コスト体系まで、9地域SOPの実例で整理しました。
★ 最重要
⚠ 失敗リスク
💡 コツ
📄 出典SOP
標準:窒素施肥量は代かき移植・湛水直播の約1.5倍(東北版の目安10〜12kg/10a)。北海道は慣行比2〜3割増。
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効く理由(脱窒・溶脱のメカニズム)乾田期間は土壌が酸化的で、施したNが硝酸態に硝化される。その後の湛水移行で土壌が還元状態になると、硝酸態Nは脱窒(N₂ガス化)して大気へ逃げ、また硝酸態は土壌に吸着されず雨水で溶脱もしやすい。この「湛水切替時のNロス」を前提に増量する。📄 東北版 SOP19-002
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ありがちな失敗移植と同じN量で設計→初中期の肥効不足で分げつ・籾数不足。逆に「1.5倍」を地力の高い圃場にそのまま適用→過繁茂・倒伏・食味低下。倍率は出発点であり、地力で補正するのが前提。
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コツロスを減らす工夫でも補える:湛水移行を見据えた緩効性(被覆尿素)でロス期間の放出を抑える/速効性を使うなら入水直前に施用して即入水(大崎の新体系)。
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基肥N設計 — 地力・前作で決める
★ 収量と倒伏に直結
標準:水稲跡は地域目安(6〜15kg/10a)。大豆跡は半量(庄内4・岩手6・美里4kg)。地力が極めて高い大潟村は大豆・かぼちゃ跡で0〜3kg。WCS用は速効性N5〜6kg。
※ バーは水稲跡の基肥N(kg/10a)。地力に反比例(肥沃な庄内・大潟村ほど少なく、寒冷で脱窒の大きい北部・北海道ほど多い)。
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効く理由Nは籾数(シンク容量)を作る最重要要素だが、過剰は倒伏・いもち・食味低下に直結。前作大豆の残存N(根粒由来)と地力Nを差し引いて設計するのが大原則。大崎は前作大豆75%の輪作圃場が主体のため上限8kgと控えめ。📄 各地域版SOP
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ありがちな失敗大豆跡の減肥を怠り倒伏(大潟村の倒伏主因=播種量過多+大豆後多肥)。逆に美里のササニシキ低収例は基肥N5.1kg=目安8kgの64%でN不足による籾数不足。増やす・減らすの両方向に失敗がある。
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作り分け北海道は脱窒対策でさらに全層+側条の併用・硝化抑制剤入り肥料(Dd778等)を活用。良食味・倒伏回避優先(ササニシキ等)は控えめ設計が定石。
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肥料タイプの選択 — 緩効性一発 vs 速効性新体系
💡 経営条件で選ぶ
標準:基本はシグモイド型被覆尿素を含む緩効性の基肥一発。内陸で作業期間が短い地域は速効性を入水直前に施用→即入水の新体系も(大崎)。
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緩効性一発の設計出芽後〜幼穂形成期に効くよう溶出をずらして配合(例:岩手「直播専用211号」20-10-10、LP30:LPS30:LPS60=3:2:5配合/宮城「乾田直播一発20」等)。東北版実証で基肥一発593kg/10a vs 基肥追肥491kg/10aと一発が優位。追肥作業も省略できる。📄 東北版 SOP19-002
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速効性「新体系」(大崎)の使いどころ尿素・化成を入水直前に散布して即入水することで脱窒ロスを回避。緩効性より肥料費が安く、降雪で春作業が短い内陸の時間制約に適合。追肥は出穂30日前+葉色が淡い場合のみ10日前。📄 大崎 SOP25-203
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ありがちな失敗緩効性一発は出穂30〜22日前ごろに肥効の谷があり葉色が一時淡くなる設計が多い。ここで慌てて追肥すると後半N過多に。速効性を乾田期間の早くに施すと脱窒で失われる(散布→入水までの日数が勝負)。
標準:均平後にブロードキャスタで散布→バーチカルハロー(パワーハロー)で表層混和。北海道は全層施肥+側条施肥の併用→パワーハロー混和→鎮圧。
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効く理由表層混和でNを作土に保持し、出芽後の根が早く肥料にアクセスできる。側条併用(北海道)は苗の近くに置くことで低温期の初期生育を確保し、脱窒リスクも分散する。📄 北海道版 SOP20-110
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コツ施肥は整地工程(①圃場準備)と一体で段取りする:均平→施肥→混和→播種前鎮圧→播種の順。施肥・耕起ムラは生育ムラに直結するのでオーバーラップ幅を一定に。GNSSガイダンス・可変施肥は大区画で有効。
新潟下越の実証:PK=鶏ふん堆肥220〜230kg/10a(播種前)+N=尿素単肥(入水直前に基肥代替、以後 入水後N5・出穂30日前N4・出穂10日前N3kg/10aを分施)。
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効く理由と成果高価な肥効調節型一発肥料を、安価な尿素単肥+地域資源(鶏ふん堆肥)で置き換え。肥料費約25%削減で収量・品質は同等以上(にじのきらめき564〜631kg/10a)。尿素は入水直前施用で脱窒を回避する。📄 新潟下越 SOP22-216
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ありがちな失敗分施回数が増えるため散布適期を逃すと設計が崩れる(一発体系より管理の手数が必要)。鶏ふんは成分変動があるので過剰投入に注意。
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作り分け労働力に余裕がありコスト最優先→新潟型分施。作業ピークを増やせない→緩効性一発。米政策の増産・価格下落局面ではコスト耐性がそのまま競争力になる。
✓前作は何か。大豆跡は半量(庄内4・岩手6kg)、地力が極めて高い圃場(大潟村級)は0〜3kgまで減らす。
✓地域目安のNを確認したか(水稲跡6〜15kg/10aの幅)。「移植の1.5倍」は出発点、地力で補正する。
✓肥料タイプは経営条件に合うか。作業を減らす→緩効性一発/コスト最優先→尿素単肥分施/春作業が短い内陸→速効性・入水直前施用。
✓速効性を使う場合、散布→入水までの日数を最短化できるか(空くほど脱窒で失われる)。
✓散布→混和→鎮圧→播種の段取りが整地工程と噛み合っているか。散布ムラ対策(オーバーラップ・GNSS)。
✓追肥の判断基準を決めたか(幼穂長で時期・葉色で要否。肥効の谷の一時的な淡化に過反応しない)。
✓P・K・ケイ酸・堆肥の土づくりを秋に計画したか(多収・連作ほど収奪が進む)。