圃場準備(両作型共通)
1
土壌pH管理 — 目標 6.0〜6.5
▾
タマネギはpH 6.0〜6.5の中性付近を好む。これを外れると養分吸収障害が生じ著しい生育不良につながる。定植前に達成しておくことが必要。
土壌分析→石灰・苦土をバランス良く施用
地域の土壌改良基準に従い施用量を決定。定植時に目標pHとなるよう、資材の種類と施用時期(定植2〜3ヶ月前)を逆算して計画する。
堆肥施用で土壌物理性を改善
都道府県施肥基準等に従い適切な量の堆肥を施用する。砕土性・保水性・排水性が向上し収量の安定につながる。
タマネギの根系の特性:りん酸不足に注意
タマネギの根は細根の発達に劣り、土壌中で移動が少ないりん酸を利用しにくい。高有効態りん酸含量の圃場を選ぶか、全量基肥でりん酸を手厚く施用する(春まき:15kg/10a、秋まき:20kg/10a全量基肥)。
2
圃場選定と輪作 — 排水性・近接性・転換履歴
▾
推奨:麦・大豆・トウモロコシ等の畑作後に作付け
水田転換初年目は砕土性低下・排水不良・病害(乾腐病等)のリスクが高いため避ける。2〜3年の畑作物を挟んでから作付けする。
排水対策:暗渠+サブソイラ+額縁明渠の組み合わせ
東北地域は生育後半が梅雨と重なる。北部・日本海側は融雪水による春先の滞水も問題。農研機構「カットシリーズ」排水改良技術も参照(https://sop.naro.go.jp/document/detail/13)。
近接した圃場を選択して防除・収穫の移動ロスを最小化
圃場が分散すると防除・収穫作業の移動時間が増大し、大規模体系での適期作業が困難になる。
収穫後も水田に戻さず畑輪作体系を継続
畑作物(麦・大豆)+野菜(タマネギ)を組み合わせた畑輪作体系を目指す。土壌病害(乾腐病・軟腐病等)の蓄積防止にも効果的。
収穫〜出荷フロー(両作型共通)
3
収穫判断 — 倒伏確認から根切りまで
▾
80%倒伏
倒伏揃期確認
→
1週間待機
保護葉確認
→
根切り
晴天日の午前中
→
デガー反転
圃場乾燥5〜10日
→
収穫機
根切りから10日後
1日1ha以上
1日1ha以上
→
通風乾燥
3日〜1週間
→
調製・出荷
タッパー・選別
根切り適期の2つのサイン
① 茎葉のハリがやや少なくなってきた
② 球に茶色い保護葉(乾いた外皮)が出始めた
この両方を確認してから根切りを実施する。
② 球に茶色い保護葉(乾いた外皮)が出始めた
この両方を確認してから根切りを実施する。
根切りは晴天日の午前中に
機械作業で傷ついた茎葉の切り口が速やかに乾燥するよう晴天日に実施。傷口が一旦乾燥すれば以後の降雨で病害が助長されることはない。
⚠ 早すぎる根切りは日焼け球の多発原因:保護葉が出始める前に根切りをすると球の南側が凹む「日焼け球」が増加し商品価値が下がる。
4
通風乾燥の実際と圃場乾燥によるボトルネック解消
▾
⚠ 圃場乾燥なし
通風乾燥:1週間/回
1ha(50コンテナ)= 5回処理
→ 5週間かかる
1ha(50コンテナ)= 5回処理
→ 5週間かかる
✅ 圃場乾燥あり
通風乾燥:3日以内/回
1ha(50コンテナ)= 5回処理
→ 約2週間に短縮
1ha(50コンテナ)= 5回処理
→ 約2週間に短縮
通風乾燥機(空っ風君・TOMTEN等)の仕組み
コンテナ外周をビニールで覆い外気を遮断。排気ファンで空気を引くことでタマネギ内を空気が移動し乾燥。低温時は加熱器で温風を送り込む。
1haあたりの保管スペース計算
5t/10a×1ha = 50t = 金属メッシュコンテナ(1,000kg)50基。4段積み・1基1.2㎡として最低15㎡以上の保管スペース+フォークリフト動線が必要。
機械体系と設備(両作型共通)
5
必要機械一覧と参考価格
▾
大規模体系(10ha以上)
中規模体系(3ha程度)
全自動播種機
約60万円(共通)
セルトレイへの土詰め〜播種〜覆土を一括自動化
乗用型全自動移植機(大規模)
約400万円
4条植え。能率約50分/10a。10ha以上に対応。
歩行型全自動移植機(中規模)
約200万円
4条植え。3ha程度の生産に対応。
根切り機
約40万円(共通)
倒伏後の根切り専用。トラクター牽引型が標準。
デガー(反転機)
約80万円(共通)
根切り後の球を反転して圃場乾燥を促進。通風乾燥工程の短縮に直結。
大型ピッカー(乗用・大規模)
約600万円
鉄コンテナ対応。1日1ha以上の収穫能率。
小型ピッカー(歩行・中規模)
約200万円
鉄コンテナ対応。3ha程度に対応。
通風乾燥機+定置式タッパー+選別機
各約150〜200万円
乾燥・茎葉切除・規格分けの調製ライン。日処理量12t(6名)。
💡 導入のポイント:新規参入では最終目標が10ha以上でも当初は2〜3haから開始し、技術と体制が整ってから規模を拡大する。機械投資には補助金等の活用で収支改善を図ること。
品種選択(両作型共通)
6
もみじ3号を基準に地域・作型で早晩性を選択
▾
「もみじ3号」(七宝)は東北地域の全域・両作型に対応できる基準品種。地域の温暖・寒冷の度合いに応じて早晩性を調整する。
| 用途 | 品種名 | 種苗会社 | 総出葉数 | 早晩性 | 適地 |
|---|---|---|---|---|---|
| 春・秋 兼用 | ターボ | タキイ種苗 | 基準より2.0枚少 | 10日早 | 南東北 |
| ターザン | 七宝 | 1.0枚少 | 10日早 | 南東北 | |
| ネオアース | タキイ種苗 | 1.0枚少 | 7日早 | 南東北 | |
| もみじ3号 | 七宝 | 13〜14枚 | 基準 | 全域対応 | |
| 春・秋 兼用 | ケルたま | タキイ種苗 | 1.0枚多 | 5日遅 | 北東北 |
| 春専用 (秋まき不可) | ガイア | タキイ種苗 | 3.0枚多 | 7日遅 | 春まきのみ |
| マルソー | カネコ種苗 | 3.0枚多 | 7日遅 | 春まきのみ | |
| トタナ | サカタのタネ | 3.0枚多 | 7日遅 | 春まきのみ |
⚠ 春専用品種(ガイア・マルソー・トタナ)は秋まき栽培に使用不可:出葉数が多いため秋まきで使用すると抽台発生リスクが著しく高まる。必ず春・秋兼用品種を選択すること。
🗺 地域別の品種選択の目安:南東北(福島・宮城南部等)→ 早生品種(ターザン・ネオアース)。東北中部(山形・岩手中部等)→ もみじ3号。北東北(青森・岩手北部・秋田北部等)→ 晩生品種(ケルたま)。青森県ではもみじ3号よりケルたまの方が収量性が安定する傾向。