土耕・高設 共通 / 最重要技術

高温対策
遮光・換気・クラウン冷却・地温管理

夏秋どり栽培の最大の課題は高温障害。30℃以上では花芽分化が強く抑制され、35℃超では花粉・雌蕊の稔性が低下して奇形果が多発する。遮光・換気・クラウン冷却・地温管理の組み合わせで、目標気温30℃以下を維持することが安定収量の前提。

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高温が引き起こす障害と温度の閾値

温度域植物体への影響果実・品質への影響
17〜25℃生育適温。旺盛な草勢と花芽形成大果・高品質果実
25〜30℃花芽分化が徐々に抑制小玉化が始まる
30〜35℃花芽分化が強く抑制。ランナー発生増加小玉・着色不良・奇形果増加
35℃以上生育停滞・株の消耗花粉発芽率が大幅低下。雌蕊稔性も低下→先詰まり等の奇形果が多発
40〜45℃急速な株の衰弱・枯死リスク受精が不可能に近い状態
北海道道南農試の試験では、35℃処理で花粉発芽率が著しく低下し奇形果(先詰まり)が多発した。35℃を超えた段階でその後数日間の果実品質に影響が残るため、予防的対策が必須。

対策①:遮光

遮光ネット・遮熱ネットの使い分け

遮光ネット(汎用)遮光率 40〜60%
ハウス外部展張が効果的
内部より最大5℃低下効果
遮熱ネット(高性能)赤外線を選択的に遮断
光合成量の低下が少ない
汎用ネットより高価
展張位置はハウス外部が原則。内部展張は熱がハウス内に閉じ込められて効果が半減する。

遮光管理のポイント

  • ☀️設置時期:最高気温25℃超となる頃(5月中旬〜)から展張を検討
  • 🌙夜間は除去することが望ましい(放射冷却を促進し夜温を下げる)
  • 📱可動式にして天候に応じて開閉できると効率的
  • ⚠️過剰な遮光は光合成量を低下させる。遮光率は60%を上限の目安とする
📷 ハウス外部への遮光ネット展張 images/heat-shading-net.jpg

対策②:換気

換気の手段と組み合わせ

  • 天窓・側窓を全開(早朝から開始し昼前の高温ピークを回避)
  • 換気扇(強制換気)でハウス内温度ムラを解消
  • 循環扇で高温の空気の滞留を防ぐ
  • くるくる換気(巻き上げ換気)で側面を大きく開口
換気の目標:ハウス内最高気温30℃以下。換気扇による強制換気で、外気温と同等近くまで下げることが可能。遮光と換気の組み合わせが最も効果的
強風時の換気は蜜蜂の活動を低下させる。花房開花期は換気と蜜蜂管理を両立させる。

対策③:クラウン冷却(積極的高温対策)

高温期にクラウン(生長点が集中する基部)の温度を直接下げることで、花芽分化を安定させる積極的な対策。遮光・換気だけでは不十分な平坦地・低標高地での栽培に特に有効。

地下水活用型(土耕・低コスト)

  • 💧冷たい地下水(15〜18℃程度)を灌水チューブで直接株元に供給
  • 🌡️クラウン周辺の地温を25℃以下に維持することで花芽分化を安定
  • 長野県安曇野の事例:北アルプスの豊富な地下水でこの技術を確立

チラー・ヒートポンプ型(高設・精密制御)

  • 🔧チラーで冷却した冷水を培地に循環させてクラウン温度を20〜22℃に維持
  • 🌙ヒートポンプを使って日没〜日の出前にハウス内を冷房(福井県事例)
  • 📊冷却により花芽分化が安定し秋期収量が増加
  • ⚠️設備投資が高額。導入前にコスト試算が必要
📷 地下水利用の培地冷却(高設) images/heat-crown-cooling-water.jpg
📷 チラー・冷温水循環装置 images/heat-chiller-system.jpg

対策④:地温管理(土耕)

土耕栽培では地温の上昇が根の活性・花芽分化・株の草勢に大きく影響する。マルチ素材の選択と地中冷却の組み合わせが効果的。

マルチによる地温抑制効果

マルチ種類地温抑制収量への影響
白黒ダブルマルチ基準
紙マルチ増収(+20%)
サニーマルチ(反射型)最大増収(+30%以上)
黒マルチなし(昇温)収量低下

地中冷却パイプ(土耕)

北海道道南農試の試験では、高畝頂部に19mm径の鋼鉄製パイプを敷設して水道水を通し、頂部から5cm深の地温が25℃を超えた時に自動通水する方式で地温上昇を抑制した。

地中冷却を行った区は果房数・収穫果数が増加し多収となった。特に冷却効果のあるマルチ(紙・サニー)との組み合わせで最も効果が大きい。

対策の組み合わせと優先順位

🌱 土耕栽培の優先順位

  1. 1遮光(40〜60%・外部展張)+換気(最優先・低コスト)
  2. 2反射型マルチまたは紙マルチで地温抑制
  3. 3地下水活用のクラウン周辺冷却(水源があれば)
  4. 4地中冷却パイプの設置(設備投資が必要)

🏗️ 高設栽培の優先順位

  1. 1遮光(40〜60%)+換気扇・天窓全開(最優先)
  2. 2冷温水循環で培地・クラウン温度を20〜22℃に制御
  3. 3高温期の給液回数増加(1日3〜6回)で地温を下げる
  4. 4チラー・ヒートポンプによるハウス冷房(高投資だが効果大)

週次チェックリスト(高温期 7〜9月)

⚠ 高温障害のサイン

  • !ハウス内最高気温が30℃を超えた日が続いている
  • !奇形果(先詰まり・先青・不受精果)が増えている
  • !果実が著しく小玉化している
  • !花芽の出蕾数が減り着果率が低下している
  • !ランナーが多数発生している(草勢が栄養成長に傾いている)

✓ 高温対策が効いているサイン

  • ハウス内最高気温が30℃以下に維持されている
  • 花房が継続的に出蕾し着果率が高い
  • 奇形果率が10%以内に収まっている
  • クラウン周辺の地温(土耕)が25℃以下
  • 果皮色が鮮やかに着色している(黄化なし)
出典:北海道道南農試「いちご夏秋どり栽培における高温障害対策」平成13年 / 栃木県農業試験場「なつおとめ夏秋どり栽培技術」2015年 / 福井県農業試験場「夏イチゴ栽培指導手引き」平成30年 / 農研機構「夏のしずくSOP」SOP22-209aK / 栃木県農業振興事務所「いちご育苗期の高温対策」令和6年