心止まり(芯止まり)とは
本来は葉になるべき生長点が花房になってしまい、その芽のそれ以上の生長が止まる現象。心止まりが発生した芽からはそれ以降の花房が出ず、大幅な減収となる。
「葉無着生腋花房」とも呼ばれ、花芽形成後に葉の分化を伴わず連続して後次の花芽を形成してしまうことで発生する。
なつおとめでは長日処理を定植直後から行った区で心止まり株率が75%に達した試験例がある(無処理区では10%)。処理開始時期と条件が極めて重要。
心止まりが発生しやすい条件
| 要因 | 詳細 | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 過剰な長日処理 | 定植直後からの強い長日処理(24時間日長等)は心止まりを多発させる | 長日処理の開始時期・強度を適正に |
| 高温+長日の組み合わせ | 35℃超の高温下での長日処理は特に心止まりを誘発 | 高温対策と長日処理の管理を連動させる |
| 四季成り性が強い品種 | すずあかね・なつおとめなど花成誘導が容易な品種で発生しやすい | 品種特性を把握した管理計画を立てる |
| 栄養過剰 | 窒素過多・草勢過剰は心止まりリスクを高める(花成に傾きやすい) | 施肥量・給液ECを適正に保つ |
心止まりへの対処法
①隣接腋芽の育成(最重要)
心止まりが発生した芽はそれ以上の花房が出ないため、株の隣接する旺盛な腋芽を1〜2本残して主軸の代わりに育成する。腋芽が充実していれば心止まりの影響を最小限に抑えられる。
高収量株の備え:普段から旺盛な腋芽を3芽以上確保しておくことが、心止まり発生時の収量維持につながる(夏のしずくの推奨管理)。
②長日処理の適正化
- 📅長日処理の開始は、株が十分に充実してから(定植後4〜6週以降)
- ⏱️間欠的な長日処理(2週間ごとに24時間日長と自然日長を繰り返す)が連続出蕾性と腋芽の葉数を両立させる
- 💡16時間日長または隔日20時間日長が心止まり発生を抑えながら花房を継続させる
秋期の花房発生促進技術
秋(9月以降)は気温低下とともに花芽分化が鈍化し、10〜11月の収量が落ちやすい。以下の技術で秋期収量を確保する。
① 長日処理(電照)による花房発生促進
| 処理方法 | 効果 | 心止まり発生 |
|---|---|---|
| 24時間日長(連続) | 花房発生が多い | 多い |
| 16時間日長 | 継続的な出蕾 | 少ない(推奨) |
| 隔日20時間日長 | 継続的な出蕾 | 少ない(推奨) |
| 間欠24時間(2週ごと) | 24時間と同等収量 | 最も少ない |
出典:農研機構東北農研(なつあかり試験)
間欠長日処理が最も安全で効果的:2週間ごとに24時間日長と自然日長を繰り返す間欠処理は、連続24時間日長と同等の花房数・収量を得ながら、葉のない腋芽(心止まり予備群)の発生を抑制できた。
② 摘果房終了期の調整
摘果房(花房除去)を遅らせることで収穫のピークを後ろにずらし、秋期の収量を増加させることができる。北海道道南農試の試験では、摘果房終了期を7月5日→7月20日と遅らせることで9〜10月の収量が増加した。
| 摘果房終了期 | 夏期収量 | 秋期収量(9〜11月) | 総収量への影響 |
|---|---|---|---|
| 6月15日(早期終了) | 多い | 少ない | 総収量はやや少 |
| 7月5日 | 中 | 中 | バランス型 |
| 7月20日(遅め終了) | 少ない | 多い | 秋に収量が集中 |
販路・出荷計画に合わせて摘果房終了期を調整する。業務用で秋の需要が高い場合は7月中旬まで摘果房を継続して秋期収量を増やす戦略が有効。
③ 秋期の保温と温度管理
- 🌡️10月以降、最低気温が10℃を下回り始めたら加温・保温を開始する
- 🌡️目標最低気温:10℃以上(受精・果実肥大・着色を確保するため)
- 🌡️開花期の昼間温度は18〜22℃が理想。低温では奇形果・着色不良が発生する
品種別 心止まり発生しやすさ
| 品種 | 心止まりの起きやすさ | 対策 |
|---|---|---|
| すずあかね | やや多い(四季成り性が強い) | 腋芽を多め(3芽以上)に確保。8月に株休息 |
| 夏のしずく | 比較的少ない | 複数腋芽確保で万一に備える |
| なつおとめ | 中程度(長日処理の条件次第) | 長日処理を株充実後に開始。間欠処理が有効 |
| なつあかり | 連続出蕾性が弱い→心止まりリスク高め | 間欠長日処理が特に有効(農研機構推奨) |
| とちひとみ | 連続出蕾性が強い→心止まりが少ない | 長日処理は必要最小限で可 |