品種選択ガイド

夏秋いちご 品種一覧ガイド

夏秋どり栽培に使える四季成り性品種は2000年代以降に急速に育成が進んだ。品種ごとに適地・収量性・果実品質・管理の難易度が大きく異なる。品種特性を正しく理解して自分の経営に合った選択をする。

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夏秋いちご品種の全体像

四季成り性品種は日長に関わらず花芽を形成する特性をもち、春定植→夏秋収穫の作型に使われる。2000年代以降に農研機構・各県農試・民間が本格的な育種に着手し、現在では複数の品種が実用化されている。

品種選択の前提:夏秋いちごの栽培適地は「夏季(7〜8月)の最高気温が概ね30℃以下、最低気温が20℃以下の冷涼地」。品種がどれだけ優れていても、高温多湿の平地では収量・品質の確保が困難なことを前提として品種選択を行う。

主要品種の特性比較

品種名 育成機関 登録年 適地 収量特性 果実特性 栽培上の特徴
すずあかね ホクサン(民間) 2010年 北海道・東北・高冷地 高い。北海道高設で安定多収 橙赤色・球円錐形・硬果・日持ち◎。乱形果少 四季成り性強く芯止まりに注意。高設専用に近い。購入苗利用
夏のしずく 農研機構東北農研+東北5県 2021年出願 東北・北海道・長野・山梨 高い。3t/10a以上(冷涼地)。9〜11月に多収 円錐〜長円錐。硬度が既存品種より30〜50%高い。糖度・酸味のバランス良 ランナー旺盛で自家採苗容易。土耕・高設両対応。種苗法許諾必要
なつおとめ 栃木県農業試験場 2011年 東北・準高冷地(100〜500m) 中〜高。2.7t/10a(那須塩原市実績)。平坦地では低収 鮮赤色・円錐形・硬度高め・食味良。先青果の発生が少ない 初期草勢が強くチップバーンに注意。心止まりは中程度。栃木県品種
なつあかり 農研機構東北農研 2007年 東北・北海道 中。連続出蕾性がやや弱い 高糖度(Brix10.1)・食味良だが果実が柔らかく日持ちに劣る 「夏のしずく」の育種母体。連続出蕾性が弱いため間欠長日処理が有効
エバーベリー 農研機構 東北・北海道 中程度 果実中〜小。業務用に利用 制限が少なく利用しやすい。「夏のしずく」との比較品種として使用
サマーベリー 奈良県(1980年代) 東北・北海道 草勢強い。果実は「夏のしずく」より軟果 「なつあかり」の母親品種。古い品種だが現在も一部で利用
ペチカ (民間) 東北・北海道 中程度 糖度高め・食味良 北海道での研究で比較品種として多用

品種選択の判断軸

高設栽培で大規模化を目指す場合

すずあかねが第一選択。北海道型高設栽培での実証が最も蓄積されており、マニュアル化しやすい。購入苗で毎年安定して始められる。
夏のしずくも高設・土耕両対応で実績が増加中。農研機構による品種サポート体制があり、東北・北海道での普及が進んでいる。

土耕栽培で参入コストを抑える場合

夏のしずくが土耕対応を明示しており、自家採苗でコストを抑えられる。ランナー発生が旺盛で苗確保が容易。
なつおとめ(栃木県内)は準高冷地での土耕栽培実績が豊富。春定植・秋定植・2年株の複数作型で使える。

果実品質の比較(主要3品種)

品種果実硬度
(gf/φ2mm)
糖度
(°Brix)
酸度
(%)
食味業務用適性
夏のしずく44.9(最高)9.70.91やや良◎(硬果・日持ち優)
なつあかり34.510.10.73○(食味良だが軟果)
サマーベリー29.59.91.02やや良△(軟果で日持ち劣)
なつおとめ65.57.80.82◎(最硬果・流通性◎)

夏のしずくデータ:農研機構SOP22-209aK / なつおとめデータ:栃木県農試新技術シリーズNo.17

地域適応性(標高・気温別の収量目安)

なつおとめの試験では、標高が収量・品質に大きく影響することが明確に示されている。

試験地(標高)夏季気温の特徴商品果収量
(なつおとめ)
商品果率不受精果率
那須塩原市(345m)冷涼535g/株(収量比100)64.7%2.2%
宇都宮市(165m)やや高温399g/株(75)52.8%6.1%
栃木市(58m)高温314g/株(59)36.3%14.7%
平坦地(低標高)では、たとえ高温対策を講じても不受精果が多発し商品果率が低下する。夏秋どり土耕栽培の立地選定では標高300m以上の冷涼地が安定生産の前提条件となる。

種苗の入手・許諾について

品種入手方法自家増殖の許諾
すずあかねホクサン株式会社・提携種苗業者から購入育成者権者への許諾が必要
夏のしずく農研機構HP記載の入手先一覧 or 種苗業者入手後1年間は不要。以降は農研機構への許諾申請(無償)が必要
なつおとめ栃木県内の種苗業者・農協栃木県内限定の利用許諾が基本。詳細は栃木県農試に確認
なつあかり農研機構系の種苗業者農研機構に確認
種苗法の改正(令和4年4月1日)により、登録品種の自家増殖には育成者権者の許諾が必要となった。品種を選定する際は必ず入手先と許諾条件を確認すること。
出典:農研機構「夏のしずく標準作業手順書」SOP22-209aK / 栃木県農業試験場「なつおとめ夏秋どり栽培技術」2015年 / NAT's Berry Field「安曇野の夏秋いちご」 / 施設園芸.com「夏イチゴの栽培方法」