夏秋いちご品種の全体像
四季成り性品種は日長に関わらず花芽を形成する特性をもち、春定植→夏秋収穫の作型に使われる。2000年代以降に農研機構・各県農試・民間が本格的な育種に着手し、現在では複数の品種が実用化されている。
品種選択の前提:夏秋いちごの栽培適地は「夏季(7〜8月)の最高気温が概ね30℃以下、最低気温が20℃以下の冷涼地」。品種がどれだけ優れていても、高温多湿の平地では収量・品質の確保が困難なことを前提として品種選択を行う。
主要品種の特性比較
品種選択の判断軸
高設栽培で大規模化を目指す場合
すずあかねが第一選択。北海道型高設栽培での実証が最も蓄積されており、マニュアル化しやすい。購入苗で毎年安定して始められる。
夏のしずくも高設・土耕両対応で実績が増加中。農研機構による品種サポート体制があり、東北・北海道での普及が進んでいる。
土耕栽培で参入コストを抑える場合
夏のしずくが土耕対応を明示しており、自家採苗でコストを抑えられる。ランナー発生が旺盛で苗確保が容易。
なつおとめ(栃木県内)は準高冷地での土耕栽培実績が豊富。春定植・秋定植・2年株の複数作型で使える。
果実品質の比較(主要3品種)
| 品種 | 果実硬度 (gf/φ2mm) | 糖度 (°Brix) | 酸度 (%) | 食味 | 業務用適性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 夏のしずく | 44.9(最高) | 9.7 | 0.91 | やや良 | ◎(硬果・日持ち優) |
| なつあかり | 34.5 | 10.1 | 0.73 | 良 | ○(食味良だが軟果) |
| サマーベリー | 29.5 | 9.9 | 1.02 | やや良 | △(軟果で日持ち劣) |
| なつおとめ | 65.5 | 7.8 | 0.82 | 良 | ◎(最硬果・流通性◎) |
夏のしずくデータ:農研機構SOP22-209aK / なつおとめデータ:栃木県農試新技術シリーズNo.17
地域適応性(標高・気温別の収量目安)
なつおとめの試験では、標高が収量・品質に大きく影響することが明確に示されている。
| 試験地(標高) | 夏季気温の特徴 | 商品果収量 (なつおとめ) | 商品果率 | 不受精果率 |
|---|---|---|---|---|
| 那須塩原市(345m) | 冷涼 | 535g/株(収量比100) | 64.7% | 2.2% |
| 宇都宮市(165m) | やや高温 | 399g/株(75) | 52.8% | 6.1% |
| 栃木市(58m) | 高温 | 314g/株(59) | 36.3% | 14.7% |
平坦地(低標高)では、たとえ高温対策を講じても不受精果が多発し商品果率が低下する。夏秋どり土耕栽培の立地選定では標高300m以上の冷涼地が安定生産の前提条件となる。
種苗の入手・許諾について
| 品種 | 入手方法 | 自家増殖の許諾 |
|---|---|---|
| すずあかね | ホクサン株式会社・提携種苗業者から購入 | 育成者権者への許諾が必要 |
| 夏のしずく | 農研機構HP記載の入手先一覧 or 種苗業者 | 入手後1年間は不要。以降は農研機構への許諾申請(無償)が必要 |
| なつおとめ | 栃木県内の種苗業者・農協 | 栃木県内限定の利用許諾が基本。詳細は栃木県農試に確認 |
| なつあかり | 農研機構系の種苗業者 | 農研機構に確認 |
種苗法の改正(令和4年4月1日)により、登録品種の自家増殖には育成者権者の許諾が必要となった。品種を選定する際は必ず入手先と許諾条件を確認すること。