夏秋どり / 土耕栽培

ほ場準備・土づくり・施肥設計

土耕栽培の収量は土壌条件に大きく左右される。定植の1〜2ヶ月前から土壌消毒・pH矯正・堆肥施用・基肥を正確に組み合わせることが、安定した長期収量の土台となる。

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ほ場選定の条件

必須条件

  • 排水性が良好(過湿は根腐れ・病害の温床)
  • 日照が確保できる(南向き・障害物なし)
  • 夏季最高気温が概ね30℃以下の冷涼地
  • 灌水水源(地下水・ため池等)が近くにある
  • 前作でいちご・バラ科作物の連作でないこと
連作回避が最重要:同一圃場で連作するとフザリウム菌・炭疽病菌・萎黄病菌が土壌に蓄積し、収量が年々低下する。3〜4年以上のサイクルで他作物と輪作するのが理想。やむを得ず連作する場合は土壌消毒を必ず実施する。

定植前の作業フロー

6〜7週前
前作残渣の除去
前作の株・根・枯葉をすべて圃場から除去し、病害虫の残留源をなくす
5〜6週前
土壌消毒
太陽熱消毒または薬剤消毒を実施。消毒後2週間以上をあけてから次の作業へ
3〜4週前
pH矯正・堆肥施用
苦土石灰で pH 5.5〜6.5 に調整。堆肥を施用して有機物と土壌微生物を補充
1〜2週前
基肥施用・畝作り
化成肥料(緩効性)を施用し深耕。高畝を成形してマルチを展張
定植当日
定植・灌水
花房方向を確認して定植。原水で十分灌水して活着を促す

土壌消毒

太陽熱消毒(低コスト・環境負荷小)

  • 🌞7〜8月の高温期に土壌を湛水した後、透明ビニールで被覆して地温を40〜50℃に上昇させ、3〜4週間維持する
  • フザリウム・センチュウ・雑草種子に有効。薬剤不要で残留問題なし
  • ⚠️晴天日が続く時期限定。効果は薬剤消毒より劣る場合がある
📷 太陽熱消毒の様子(湛水・被覆) images/soil-solar-disinfection.jpg

薬剤消毒(確実性が高い)

  • 💊クロルピクリン・D-D等の燻蒸剤を施用後、ビニールで被覆して7〜14日間
  • 炭疽病・萎黄病菌・センチュウに高い効果
  • ⚠️施用後の換気と残効期間の確認が必要。農薬登録を確認のこと
消毒後は2〜3週間をあけてから定植(残効・ガス害を防ぐため)

pH矯正と堆肥施用

pH矯正

目標 pH5.5〜6.5
資材苦土石灰(100kg/10a 程度)
施用タイミング定植の3〜4週前に全面散布・深耕
確認方法土壌診断(pH計 または 分析機関)
pH 5.0以下では鉄・マンガン過剰で生育障害。pH 7.0以上では鉄・ホウ素欠乏で上位葉が黄化する。

堆肥施用

施用量2〜5 t/10a(完熟堆肥)
目的有機物補充・土壌微生物の活性化・保水性・通気性改善
種類牛糞堆肥・もみ殻堆肥・腐葉土など
注意点未熟堆肥はガス害・病原菌のリスクあり。必ず完熟品を使用

施肥設計(夏秋どり土耕栽培)

基本的な施肥量の目安(10a あたり)

品種・事例N(窒素)P₂O₅(リン酸)K₂O(加里)備考
なつおとめ(栃木県)
収量2.7t時の吸収量
基肥+追肥 計20kg
吸収量:16kg
計11kg相当計26kg相当茎葉への分配が多い
果実への影響は少ない
夏のしずく(農研機構)
土耕栽培
基肥は定植1〜2週前
追肥:0.5kg/10a程度
土壌診断に基づく土壌診断に基づく追肥は肥大期以降
株の様子を見ながら
高収量事例(栃木県・土耕)
単収7.3t
基肥 12kg
(有機質肥料中心)
34kg22kg追肥は液肥(灌水チューブ)
3月以降は低N液肥を10日ごと

施肥の基本原則

  • 1基肥は少なめに。いちごの根は肥料焼けしやすい。定植の1〜2週前に施用し土とよく混和する
  • 2緩効性肥料(ロング系)を基肥に使うと肥効が安定し、急激な濃度上昇を防げる
  • 3窒素過多に注意。過剰な窒素は花芽分化を抑制し草勢過多・着果不良につながる
  • 4追肥は果実肥大期以降。収穫が始まったら液肥を灌水チューブで施用。10日に1回程度が目安
  • 53月以降は低N液肥。気温上昇とともに堆肥の肥効が発現するため、追肥の窒素濃度を下げて窒素過多を防ぐ
  • 6土壌診断を毎年実施し、リン酸・カリの蓄積過剰に注意

畝作り・マルチ展張

畝の規格(雨よけ土耕・2条植え)

畝幅120cm前後(2条植え)
畝高さ20〜30cm(高畝。排水確保)
通路幅60〜80cm
灌水チューブ畝頂部に2条敷設

マルチの種類と効果

種類地温抑制収量への影響
白黒ダブルマルチ(標準)中程度基準
紙マルチ増収(+20%程度)
サニーマルチ(アルミ反射型)最大最も増収(+30%以上)
黒マルチ小(むしろ昇温)収量低下
裸地(マルチなし)なし大幅減収

出典:北海道道南農試(平成12年)。サニーマルチ・紙マルチは地温上昇を抑制して花房数・収穫果数を増加させた。

高温期の地温対策として反射型マルチが最も効果的。ただし過繁茂になりやすいため古葉かきを徹底する。白黒ダブルマルチは汎用性が高くコストと効果のバランスが良い。

週次チェックリスト(定植前〜活着期)

⚠ 要注意サイン

  • !土壌診断を行わずに施肥量を決めている
  • !前作でいちごを栽培した圃場で消毒をスキップした
  • !畝が低く(10cm未満)、梅雨時に水が溜まりやすい
  • !未熟堆肥を多量施用した(ガス害・病害リスク)

✓ 正常・準備完了

  • 土壌診断でpH 5.5〜6.5 に矯正済み
  • 土壌消毒(太陽熱 or 薬剤)が完了している
  • 完熟堆肥と緩効性基肥が均一に混和されている
  • 高畝(20〜30cm)が成形され灌水チューブが敷設済み
  • マルチが展張されて定植穴が開けられている
出典:農研機構「夏のしずく標準作業手順書」SOP22-209aK(2023年) / 栃木県農業試験場「なつおとめ夏秋どり栽培技術」(2015年) / 北海道道南農試「いちご夏秋どり栽培における高温障害対策」(平成13年) / ゼロアグリ「イチゴの施肥解説」