栽培方式の選択

土耕栽培 vs 高設栽培
夏秋いちごの選択ガイド

初期投資・管理難易度・収量性・土壌病害リスク——それぞれに明確なトレードオフがある。自分の経営規模・立地・目指す栽培スタイルに合わせて選択する。どちらが「正解」かではなく、何を優先するかで決まる。

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2方式の基本的な違い

🏗️ 高設栽培(養液栽培)

地面から約1mの高さに設置した栽培ベンチの培地に苗を植え、点滴チューブで養液を供給する方法。培地・水・肥料をすべてコントロールでき、土壌条件に左右されない。

🌱 土耕栽培(雨よけ施設)

雨よけハウス内の土壌に苗を直接定植する方法。高設用の架台・培地が不要で初期投資を抑えられる。土壌の緩衝能力が高く、施肥管理の自由度がある。

主要項目の比較

比較項目 🏗️ 高設栽培 🌱 土耕栽培
初期投資 高い(ベンチ・培地・灌水設備)
苫東ファーム型:数千万〜/10a
低い(雨よけハウスのみ)
高設比で1/3〜1/2程度
収量性 高い。精密な環境制御で
2〜5 t/10a以上が見込める
やや低め。土壌条件や年次変動で
1.5〜3 t/10a(冷涼地)
土壌病害リスク 低い。毎年新培地(または消毒)で
連作障害を回避しやすい
高い。炭疽病・萎黄病・フザリウムが
土壌に蓄積しやすい。土壌消毒必須
作業性 良好。腰高作業で収穫・管理が楽。
女性・高齢者でも従事しやすい
やや劣る。腰を曲げた低姿勢での
作業が多い。収穫時の負担が大きい
管理の難易度 習熟が必要。EC・pH・給液頻度を
精密にコントロールする必要がある
比較的容易。土壌の緩衝能力が
肥培管理の誤差を吸収してくれる
マニュアル化 しやすい。培地・給液を統一すれば
複数圃場・雇用従業員でも再現性が高い
しにくい。土壌条件が圃場ごとに異なり
現地適応が必要
高温対策 冷温水循環・クラウン冷却などの
精密な温度制御が可能
遮光・換気・地中冷却パイプ・
反射マルチなどで対応
株養成期間 培地量が少ないため根圏が制限される。
株の充実に注意が必要
根域が広く株の充実度が高い。
2年株での連続収穫が可能
果実品質 EC管理で糖度をコントロールしやすい。
果実が地面に触れず傷みにくい
有機物由来の複合的な食味が出やすい。
果実が地面に触れるリスクあり
規模拡大 向いている。企業的大規模経営に
最適。雇用拡大と標準化が両立
個人〜小規模向き。設備投資を
抑えた参入障壁の低い栽培

選択の判断フロー

夏秋いちご栽培を始める 初期投資に1000万円以上かけられるか? YES NO 企業・大規模経営か? 土壌病害の既往歴があるか? YES NO YES NO 高設栽培 大規模・標準化 高設or土耕 規模に応じて選択 高設栽培 病害回避優先 土耕栽培 低コスト参入 ※ 立地条件(標高・気温)は両方式共通の前提。最高気温30℃以下の冷涼地であることが最優先条件。 ※ 土耕栽培は初期投資を抑えながら技術習得できる。その後高設へ移行するステップアップ経路もある。

土耕栽培の位置づけ:参入障壁が低いエントリー経路

土耕栽培のメリット
雨よけハウスさえあれば始められる。高設ベンチ・培地・精密灌水設備が不要で、初期投資が高設の1/2〜1/3に抑えられる。土壌の緩衝能力が高く、施肥・灌水管理の失敗が即時に品質劣化に直結しにくい。根域が広く株が大型化しやすいため、2年株での連続収穫も可能。
土耕栽培の注意点
連作により炭疽病・萎黄病・フザリウム等の土壌病害が蓄積しやすい。同一圃場での連作を避け、土壌消毒(太陽熱消毒・薬剤消毒)を徹底することが必須。腰を曲げた姿勢での収穫作業が多く、長期的な作業性はやや劣る。
実証事例:長野県安曇野(標高700m以下)では、北アルプスの冷たい地下水を利用したクラウン冷却技術の確立により、土耕・高設両方で夏秋いちご産地を形成。販売高は平成29年度に3億円を突破した(JAあづみ)。

栽培方式別の収量・経営の目安

2〜5 t
高設栽培 商品果収量/10a
(品種・設備による)
1.5〜3 t
土耕栽培 商品果収量/10a
(冷涼地・適切な管理下)
2,000円/kg
夏秋期の平均卸売価格
(端境期プレミアム)
3,000円↑
直接取引時の単価
(業務用ケーキ等)
出典:農研機構「大規模いちご生産技術導入マニュアル」令和2年3月 / 農研機構「夏のしずく標準作業手順書」SOP22-209aK / JAあづみ産地情報 / 農畜産業振興機構「夏秋どりいちごの生産の現状」