作物別シート | トマト・長期多段どり(日本)
Tomato setpoints — long-term multi-truss (Japan)
マニュアル全体が「数値は作物別シートが供給」と前提してきた、その具体値の実体。ステージ別の温度・飽差・CO₂・EC・生理障害ラインを、一次情報で確認した値を中心にまとめる。各値は使うモード(M番号)に紐づく。植物生理は地域非依存なので、ここの目標値はベトナム高原でも基本同じ。違うのは「達成の手段」で、それはカレンダー(日本版/VN版)が示す。
温度の数値は促成・長期多段どりの一次情報(県農試・実務資料・吉田剛「トマトの長期多段どり栽培」)に基づく。実施設では草勢・段数を見て微調整する。
Temperature setpoints by growth stage
| ステージ | 昼温(℃) | 夜温(℃) | 換気開始 | 備考 | モード | 典拠 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 活着期 定植〜約2週 | 25〜28 ※遮光で抑制 | 12〜13 以上 | 28℃ | 発根を優先。残暑は遮光+控えめ潅水で過繁茂を防ぐ | M1M8M4 | ✓一次 |
| 栄養生長・草勢確立 〜開花 | 23〜26 | 13〜15 | 25〜27℃ | QD(夕方急冷)を習慣化。CO₂施用の準備 | M1M3M2 | ✓一次 |
| 開花・着果 各花房 | 23〜26 | 10〜13 | 25〜27℃ | 昼夜較差を広げ生殖生長へ。花粉の適温域 | M2M4 | ✓一次 |
| 果実肥大・収穫 収穫期 | 23〜26 | 10〜12 | 25〜27℃ | 平常運転のベース | M1M4 | ✓一次 |
夜温を一律10〜12℃にせず時間帯で分けると転流を促せる:夕方からの3時間を13〜15℃(同化産物を果実へ転流)→ 次の2〜3時間を12℃ → 深夜〜早朝を10℃。QD(日没30〜60分前の急冷)で就寝前の過湿を抜き、ここから多段夜温に入る。
盛夏は単一温度で機械的に切り替えず、段階(カスケード)+起動/停止のヒステリシスで組む。守るべき壁は30℃ではなくピーク35℃(花粉)と日平均26℃(着果)。下表は初期値の例で、施設の気密性・冷却能力・地域の夏の湿度に応じ1〜2作回して校正する。
| 段 | 起動の目安(室温) | 動作 | 戻す(停止) | モード |
|---|---|---|---|---|
| ① 遮光 | 28℃ 接近/強日射 | 遮光カーテンを展開し日射熱の流入を先に断つ(湿度に関係なく効く保険) | 日射低下・27℃以下 | M8 |
| ② 換気 | 30℃ | 天窓・側窓を全開にして自然換気を最大化(省エネ優先) | — | M1 |
| ③ 冷却 | 31〜32℃ (換気で追いつかない) | 細霧:窓を開けたまま噴霧(気化冷却)/パッド&ファン:窓を閉じて陰圧の一方向気流で運用 | 29℃まで低下で停止→②へ | M6M7 |
ヒステリシス=起動と停止の温度をずらす(例:起動31〜32℃/停止29℃)。同一温度で切ると窓と冷房が往復するハンチングになるため。日本の高温多湿ではパッド・細霧とも気化冷却の効きが落ちるので、必ず①遮光を先に効かせる。細霧は窓開・換気併用、パッド&ファンは窓閉・ファン制御(両者は排他)。受粉のマルハナバチは28℃超で活動低下するため、昼を30℃台に張り付かせないことが着果維持にも効く(過剰冷却は不要)。
Seasonal overrides
| 季節 | 設定の上書き | モード | 典拠 |
|---|---|---|---|
| 厳寒期(冬) | 夜温を多段で作る:夕方3h 13〜15℃(転流促進)→ 2〜3h 12℃ → 深夜〜早朝 10℃。CO₂は継続(補光ありなら止めない=空洞果予防)。給液ECを上げる。 | M4M2M9 | ✓一次 |
| 高温期(盛夏) | 上限管理:30℃で強制換気/35℃は危険(花粉稔性が急低下)。遮光+細霧で気温と強日射を抑える。ホルモン処理は25℃以下の朝に。 | M1M6M8 | ✓一次 |
Humidity (VPD) & CO₂
| 項目 | 値・条件 | モード | 典拠 |
|---|---|---|---|
| 飽差 目標域 | 3〜6 g/m³(オランダ式 4〜7 hPa 相当)。日射の強い時間帯で気孔を開かせ光合成を進める | M1M5 | ✓一次 |
| 飽差 下限(病害ライン) | 多湿側に振れて飽差2 hPa 以下(≒夜間の高湿)になると灰色かびの分生子が増える。夜間・暖房が微妙な季節に注意。下限を割らせない | M5 | ✓一次 |
| 結露除去 起動 | 朝、被覆が温まってからカーテンを開く(早開き=屋根面の滴下)。循環扇で葉面境界層を更新し、わずか換気で排湿 | M5 | ✓一次 |
| CO₂ 目標/時間帯 | 800〜1000 ppm、日射のある6〜15時に施用。換気開始で停止。補光がある厳寒期は継続 | M2M9 | ✓一次 |
Irrigation & nutrient EC
| 項目 | 値・考え方 | モード | 典拠 |
|---|---|---|---|
| 給液EC(ステージ別) | 定植期 0.8 → 生育 1.2〜1.5 → 収穫 1.5〜2.0 dS/m。糖度を上げる高EC管理や厳寒期は 2.5〜3.0 | WS | ✓一次 |
| 給液の与え方 | 日射比例で増減(晴天増・曇天減)。少量多潅水で土壌の乾湿差を最小化=裂果・尻腐れ予防 | WSM8M9 | ✓一次 |
| 排液管理 | 排液率 20%前後を目安に、排液ECを見て設定ECを調整 | WS | ✓一次 |
| 活着期の例外 | 発根促進のため控えめ潅水(日射比例の通常運用とは別扱い) | WS | ✓一次 |
Physiological disorder thresholds
| 障害 | 発生条件と回避 | 典拠 |
|---|---|---|
| 高温・花粉 | 35℃以上で花粉稔性が急低下・結実不良(平均26℃以上で着果不良)。盛夏は遮光・細霧・換気最大で回避 | ✓一次 |
| ホルモン処理 | 25℃以下の朝に規定濃度で。高温下は効きすぎて空洞果 | ✓一次 |
| 裂果 | 急な水分変化・直射・結露で発生。少量多潅水で乾湿差を抑え、Caを補給、結露を作らない | ✓一次 |
| 空洞果 | 低日照・CO₂不足・ゼリー質不足。厳寒期はCO₂継続・受光改善 | ✓一次 |
| 尻腐れ | Ca欠・水分変動。安定給液とCa | ✓一次 |
| 灰色かび | 多湿(飽差下限割れ)・葉濡れ。飽差を死守・除湿・葉を濡らさない | ✓一次 |
これらは「越えてはならない壁」。調停(setup)のT1病害回避・T2温度死守は、この限界ラインを守るために上位優先に置かれている。数値の単位や品種差は実施設の実測で校正する。