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⑧ 経営・施設 / 産地・市場情報

日本のトマト産業
——産地・自給率・経営指標

農水省「作物統計調査(令和5年産)」をベースに、国内生産の現状・主要産地の特性・作型別収量・経営指標を整理したコンサル向けデータシート。

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日本のトマト産業 基本指標(令和5年産)

68.1万t
国内生産量(収穫量)
農水省 作物統計 2023年
1.1万ha
作付面積
施設・露地を含む
約55%
自給率(重量ベース)
生食用は高い・加工用は低い
1位:熊本
生産量日本一
シェア約18%(3年連続)

自給率の構造——生食用と加工用で大きく異なる

生食用トマトの自給率
約90%(国産)

国産が主体。輸入は韓国・オランダ等から少量。施設栽培の普及で周年供給が可能。

加工用トマトの自給率
約20%

ケチャップ・ソース・ジュース原料は輸入依存度が高い。中国・イタリア・米国から輸入。国内は長野・北海道が中心。

重量ベースの自給率55%は加工用を含んだ数値。生食用のみでは約90%程度とみられ、実態としては「生食用は国産主体・加工用は輸入主体」という二重構造になっている。
出典:農林水産省 作物統計調査(令和5年産) / ALIC「今月のやさい:トマト」2024年 / プリラン47「トマトの自給率」

主要産地ランキングと産地特性

1

熊本県

全国シェア約18%。温暖な気候を活かした冬春施設トマトが中心。「熊本塩トマト」などブランド化も進む。JA・企業的経営体による大規模施設化が進展。

~18%
生産シェア
2

北海道

全国シェア約9%。夏秋作型が主体。加工用トマトの主要産地でもある。短い作期で高収量を狙う夏秋型技術が集積。

~9%
生産シェア
3

愛知県

全国シェア約7%。田原市(渥美半島)が最大産地。「渥美トマト」としてブランド確立。複合環境制御の先進産地で愛知農総試の実証フィールド。

~7%
生産シェア
4

茨城県

関東平野の施設栽培。冬春・夏秋の2作型で年間安定出荷。農研機構つくばが立地し先端技術の実証産地でもある。

~5%
生産シェア
5

栃木県

全国シェア約5%。「とちぎの星」など高付加価値品種の産地化が進む。施設栽培の高度化(複合環境制御・LED補光)の実践産地。

~5%
生産シェア

その他主要産地

千葉県・福岡県・長野県(夏秋)・静岡県・岩手県など。産地リレーにより通年安定供給を実現。

残56%
その他全県
出典:農水省「令和4・5年産 作物統計調査」 / 地域の入れ物「トマトの生産量の都道府県ランキング令和4年」 / ALIC「今月のやさい:トマト」

作型別の生産構成——冬春施設が収量の中心

施設栽培で収穫期間が長い冬春トマトは、作付面積では全体の34%程度だが収穫量では54%を占め、反収も最も高い。長期多段どり栽培はこの冬春型の高収量化を目指す技術体系。

作型別 10a当たり収量比較(令和3年産・全国平均)
冬春 大玉
10,874kg
10,874kg
冬春 ミニ
8,900kg
8,900kg
夏秋 大玉
4,405kg
4,405kg
夏秋 ミニ
4,020kg
4,020kg
冬春大玉トマト(施設長期多段どり)の全国平均反収10,874kg/10aに対し、「100トン/10a」という目標値(吉田剛本)はこの約9倍。施設環境制御技術の最高到達点を示す数値。
作型作付面積比収穫量比主な産地出荷時期
冬春トマト(施設) 約34%約54% 熊本・愛知・茨城・栃木 12〜6月
夏秋トマト(施設・露地) 約66%約46% 北海道・東北・長野 7〜11月
出典:minorasu「トマトの平均反収は?10a当たり収量・収益の目安」2023年7月 / 農水省 令和3年産 作物統計調査

施設トマトの経営指標——目安と改善余地

経営規模・条件粗収益目安経営費目安所得目安所得率
標準的施設栽培(10a・冬春) 700〜900万円 550〜750万円 150〜200万円 20〜25%
大規模経営(30a・複合環境制御) 2,500〜3,500万円 2,000〜2,700万円 500〜800万円 20〜25%
長期多段どり先進経営(10a・100t目標) 1,200〜1,500万円+ 700〜900万円 500〜600万円+ 35〜40%
所得率が低いグループの特徴として、動力光熱費(暖房重油費)と減価償却費が突出して大きいことが確認されている(農業利益創造研究所2022年分析)。CO₂施用・ヒートポンプ導入・複合環境制御は「コスト削減」と「収量増加」を同時に実現する最重要投資。
出典:農業利益創造研究所「トマト農家の収益性を徹底分析」2022年 / 日本政策金融公庫「施設園芸(トマト)の規模と収益性に関する調査」2017年 / minorasu経営指標参考値

コスト構造の特徴と改善ポイント

最大費目
荷造運賃手数料
直売・産直化で削減余地
削減余地大
動力光熱費(重油)
HP導入で50〜60%削減可能
長期回収
減価償却費
設備の収量増効果で回収

施設化・大規模化と技術革新の動向

📈 施設化・大規模化の加速

  • 企業的農業経営体による大規模施設(1ha超)への参入が増加
  • 複合環境制御の普及で10a40t超が現実的な目標に
  • オランダ型高軒高温室・高度環境制御の国内導入が増加中

🌏 輸出・高付加価値化

  • 高糖度・機能性トマトの輸出が拡大。香港・シンガポール・台湾向けが中心
  • 有機JAS認証取得で販売単価1.5〜2倍が実現可能
  • 産地間リレー体制の強化で通年安定供給を強化する動きが継続

コンサル現場での活用メモ

確認ポイント参照データ・指標活用場面
産地の収量水準の把握冬春大玉:全国平均10,874kg/10a農家の収量と全国平均の比較・改善余地の可視化
経営の優位性判断所得率:標準20〜25% / 先進35〜40%設備投資・技術向上の経営的インパクトの試算
コスト削減余地動力光熱費が低所得率グループで突出HP導入・断熱強化の費用対効果を説明する際の根拠
市場ポジショニング生食用自給率約90%・加工用は低い出荷先(市場/直売/加工用)の選択を議論する際の背景
産地間競合の把握熊本18%・北海道9%・愛知7%競合産地との差別化戦略の議論