主要培養液処方の考え方
園試処方(均衡培養液)
野菜試験場が発表した各種作物で共通して使える万能処方。各社メーカーの汎用養液肥料の基準になっている。シンプルで導入しやすい。
山崎処方(作物別処方)
作物ごとの養分吸収特性(n/w比)に合わせて設計された処方。トマト用処方では栽培ステージによる前期・後期の濃度調整が可能。より精密な管理ができる。
改良処方(大塚A処方のK濃度を高め、NH4-N・Ca・Mg・SO4を低めに設定)では、7段花房以上の茎径が有意に太く、収量・可販果率が向上した研究報告がある(J-STAGE 2007)。
各養分要素の役割・欠乏症状・対策
窒素(N)——生育の基本エンジン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 光合成酵素(Rubisco)の主成分。葉の緑色・生育速度を左右する |
| 欠乏症状 | 下位葉から黄化。生育停滞・小葉化。着果数減少 |
| 過剰症状 | 茎葉の茂りすぎ(つるぼけ)。着果不良・生殖生長が抑制 |
| 管理ポイント | 生育初期〜着果期は必要量が最大。CO₂施用で要求量が増加するので補給増が必要 |
過剰なN施肥は生殖成長を遅らせる可能性がある。元肥は少なめに設定し、追肥で草勢を見ながら調整することが基本。
カリウム(K)——果実品質の核心
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 植物体中に最も広範囲に存在。気孔開閉・光合成産物の転流を制御 |
| 欠乏症状 | 古い葉の縁が黄色→茶色く壊死(周縁から中心へ進行)。果実の硬度不足 |
| 果実への影響 | 不足すると果実が軟化・着色不良・食味低下。収穫期の要求量が大きい |
| CO₂施用時 | CO₂施用で要求量が顕著に増加。施用開始時に養液組成を見直す |
カルシウム(Ca)——果実障害の予防
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 細胞壁の強化。Ca欠乏が尻腐れ果の直接原因 |
| 欠乏症状 | 尻腐れ果(果実先端部の褐変・陥没)。上位新葉の縁枯れ |
| 吸収の特徴 | 水分とともに根から吸収される。水分ストレスがあるとCaも吸収できない |
| 対策 | 少量多かん水で安定した水分吸収を維持。葉面散布Ca補給も有効 |
Ca欠乏は「Caが足りない」より「水分ストレスでCaが吸収できない」ケースが多い。まず潅水管理の見直しを優先する。
マグネシウム(Mg)・リン(P)・鉄(Fe)
| 要素 | 主な役割 | 欠乏症状 | 対策 |
|---|---|---|---|
| Mg(マグネシウム) | 葉緑素の中心元素。光合成酵素の活性化 | 下位葉の葉脈間黄化(Mg欠乏の典型) | 硫酸マグネシウムの葉面散布・養液補給 |
| P(リン) | 根の発育・花芽形成・エネルギー伝達 | 根の発育不良・葉が紫色化 | 生育初期の十分な供給が重要 |
| Fe(鉄) | 葉緑素生成に不可欠。光合成能力の土台 | 上位新葉の黄化(鉄欠乏の典型) | pH適正化(5.5〜6.5)でFe溶解性維持。厳寒期・成り疲れ時に予防的補給 |
生育ステージ別の施肥管理方針
| ステージ | 施肥の重点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定植〜活着期 | 低濃度から開始(EC 1.0〜1.5) | 若苗定植では高EC給液では草勢抑制が困難。低濃度から徐々に上げる |
| 着果〜初期肥大期 | N・K・Caを重点補給 | 養分吸収量が最大になる時期。第1果房収穫後にも吸収ピーク |
| 厳寒期 | ECを上げて肥料濃度を維持 | 蒸散減少で吸肥量が減る。ECを2.5〜3.0に上げて対応 |
| 収穫最盛期 | K・N・Mgを重点補給 | CO₂施用条件下はN・K要求量が顕著に増加 |